9月24自(土)午後、連合会館で拓殖大学経済学部准教授の関良基氏(86期、農学博士).の講演があり、51名が参加。近年甚大な被害を及ぼしている集中豪雨対策として、国交省はダム建設を推進している。関氏は専門の森林学の見地から森林にはダム以上の保水力があり、森林の増加こそ洪水対策として優先すべきと解説された。国交省がダム建設を推進する理由と問題点を鋭く指摘、さらに真田昌幸、武田信玄の治水事業や赤松小三郎の政権構想にまで話は及び、1時間半を超える講演でした。
要旨を記します。
1.現行の治水対策とその限界
堤防は「計画高水位(堤防の耐えうる最高水位)」を基準に建設されている。国交省
は、洪水時に想定される「基本高水量(河川の処理可能流量)」が堤防の「計画高水
位」を超えないよう、ダム建設等で対応してきた。昨秋の鬼怒川の堤防決壊による
大災害他、近年の異常気象により想定以止の豪雨による洪水被害が頻繁に起きてお
り、応急対策として堤防を強化する必要がある。堤防の強化技術としては、ITRD
工法他、大きな投資のダム建設に比べて低コストで堤防破損しない技術が確立して
いるが、なぜか国交省は新技術を認めず、ダム建設を優先させている。
2.森林の緑のダム効果
森林土壌には雨水の浸透・貯留効果があるため、森林の:増加が洪水防止策として
評価できるが、国交省は森林量を増加させる面積の余地がなく、また森林の保水力
は低いというデー夕を示し、ダム建設を推進しようとしている。しかしその説明根
拠となる森林の保水力のデータは 昭和30年代のハゲ山状態の森林量が基準で保水
力が無いのは当然。森林量を増加させる面積的にも可能であることを国交省は公に
していない。既に4,600億円もの巨額を投じ建設中の八ツ場ダムの関連公益法人と
工事担当企業
等へ、国交省から104人もの役人が天下っている。このことからも、国交省がダム
建設を正当化する真意が見えてくる。
3.未来の治水対策は400年前の発想にあり!
真田昌幸は、第一次上田合戦で神川を増水させ徳川軍に大量の溺死者を出した
ことで、洪水の恐ろしさを感じ治水事業に乗り出した。方法は、生活に必要な小
径木以外のツガやシラビソ等の大木の伐採を禁じることで、森林の保水力を確保
した。また武田信玄は住民の少ない川の上流域に堤防の切れ目を作り、意図的に
雨水を溢れさせる霞堤で大災害を防いだ。その知恵は、滋賀県の流域治水や新潟
県の田んぼダム等現在の自治体の治水事業たも活かされている。しかし国交省は
論拠が曖昧のまま、ダム建設を推進している。
4.赤松小三郎の夢いまだ成らず
小三郎の建白書は人民を主権とする精神に基づいたもので、幕末時に現行日本
国憲法に近いものを作り上げた。当時、立憲主義・議会政治の実現の可能性が高
まったのに、有司専制の薩長によって暗殺された。現代でも官僚が官僚の論理で
行政を進めていて、明治維新から何ら変化の無いことが見て取れる。
(幹事72期・関 博明記)